不思議の国のトム・ハレル


このところ、さまざまなフォーマットでアルバムを出しているトム・ハレル。今一番旬なアーティストかもしれない。
「トランペットの詩人」といわれたりもするが、どこか虚構の世界の音楽のように感じるのは、何故だろう。練り込まれたアレンジが、そういう印象を与えるのかもしれない。

詩人と称されるだけあって「Roman Nights」の表題曲のようにバラードの美しさには息をのむ。一方、アップテンポになると、「Infinity」の「Coronation」のかっこよさはオリジナルなものがあるし、「Number Five」のドラムとの掛け合いはエキサイティングだ。

詩人という一言では片付けられない、さまざまな顔を持っている。
トランペットの音はしなやかで柔らかいが、バンドが生み出すサウンドは、理知的で未来的。後の世代のクリスチャン・スコットや近作で共演したアンブローズ・アキンムシーレのような無機質なクールさとは違う。


アルバムを通して聴くと、アレンジが鼻につく感じが残ってしまうところがあるので、iPod nanoでトムハレルのベストアルバムを作ってみよう(笑)。