蝦夷梅雨とホレス・シルヴァー

月に一度ほど札幌に出張していた時期があった。仕事の合間に時間が中途半端に空くときがあって、そんなときには南3西4にあるジャズ喫茶Bossaに向かった。
入口から真っ直ぐ行ったあたりに2人用ボックス席があり、いつもそこに陣取る。ここはスピーカーに正対するものの、レコードをかける場へ背を向けるかたちになる。かかっているのが誰のレコードかわからない。振り返って有名盤だと恥ずかしい思いをすることになるので、振り返るには勇気がいる。
ジャズ喫茶ではよくあることで、ジャズファンとは、つくづくつまらない見栄にまみれて生きていることを我が身をもって知る。

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いつものように時間つぶしにBossaに行き、コーヒーで一服したら、ハードバップが流れてきた。
いい演奏だ。テナーはハンク・モブレー?ピアノも聴いたことがあるぞ。ブルーノートだろうか。いや、どうも違う。うーん、誰のアルバムだろう。
なかなか振り返ることができない。
たまらず勇気を出して振り返ると、目に飛び込んできたのが、このジャケットだった。

horace silver silver's blue
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ハードバップなのに汗臭くなく軽快。曲によってメンバーが異なり、トランペットにジョー・ゴードンが参加しているのも珍しい。
中山康樹の『超ブルーノート入門』には、ホレス・シルヴァーがこの作品について不満をもっていたことが記されている。だが、ホレスのファンではない立場からすると、素直で青くさく、どこか愛おしさを感じる作品だ。

ジャケットを目に焼き付ける。蝦夷梅雨でちっとも北海道らしくない日だったけれど、晴れやかな気分で店を出た。

皇室を無視する政権は保守か

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宮内庁長官がオリパラ開催について、「感染拡大につながらないか陛下が懸念していると拝察している」と述べた。
なんだか回りくどい表現だが、要は国民の多くが開催に反対するなかで、天皇が晴れやかに五輪の開会宣言をするわけにはいかないということを内閣に突き付けたということだ。硬骨漢ともいわれる天皇が管政権の言いなりにはならないと意思表明したように思える。

これをあくまでも宮内庁長官私見として無視しようという内閣の態度は、いったいどういう了見なんだろう。なぜ素直に「不安を取り除くべく、全力で対策を講じていきたい」と言えないのだろうか。天皇をも見下す、その根拠はなんなんだろうか。
理解不能な人間たちがこの国を牛耳る。希望はいまだ見えない。

追悼 土岐英史

土岐英史が亡くなった。癌だったという。
先ごろ新作をリリースしたばかりで、まだまだ日本のジャズを牽引していくと思っていたので訃報に驚いた。以前にも書いたが、この人は歳をとってアルトの音にふくらみと艶が増した。新作が楽しみだったので残念でならない。享年71。合掌。
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雄国沼のニッコウキスゲ

ヤマレコ情報によれば裏磐梯 雄国沼のニッコウキスゲが満開らしい。かみさんに知らせたら予想どおり「行きたいっ!行こうよー」「んじゃ、行くか」というわけで朝3時に起きて出発した。
8時過ぎに登山口到着。すでに路駐の列ができていたが、天候があやしかったせいか、まだ余裕があり無事路駐できた。

1時間ほど山道を登ると休憩所。そこからゆっくり下っていくと雄国沼が見えて来た。なにやら一面黄色くなっている。ニッコウキスゲの群生だ。

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これは尾瀬を上回るニッコウキスゲ畑だ。はるか遠くまでニッコウキスゲの群生が続いている。もう少し木道を伸ばしてくれると嬉しいんだけどなぁ。

裏磐梯は観光資源が豊富なのに、首都圏からの観光客が少ない。河口湖や山中湖のようなオシャレなイメージがないからだろうか。もったいないと思いながらも、この風景はひっそりと地元の人々に愛されるのが良いのかもしれないと思った。

フレディ・ハバードとブルーノート4000番台

freddie hubbard goin up
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上手すぎるのが災いして、日本では正当に評価されていないフレディ・ハバード。代表作がないように言われるけれど、これなんぞはハンク・モブレーの好演もあって最高の出来だと思う。マッコイ・タイナーも抑制された品の良いピアノを聴かせる。

このリーダー作の後、ハバードはハンク・モブレーの『Roll Call』、ケニー・ドリュー『Undercurrent』、ジャッキー・マクリーン『Bluesnik』へ参加。これらがハードバップを代表する名盤となったのもフレディ・ハバードがいたからこそ。
ブルーノートの4000番台にフレディ・ハバードほどふさわしいトランペッターはいない。

夕焼け

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ウォーキングから帰る途中、空がどんどん焼けてきた。夕焼けが進んでいくのをゆっくり眺めるなんて、いつ以来のことだろう。

この1年で生活が大きく変わった。
家にいる時間が増えてお金も使わなくなった。早寝早起きになったし、飽食せず、質素な食事で健康的な暮らしを心がけるようになった。こうして夕焼け空を眺める余裕が出来たのも新型コロナのおかげだ。

夕焼けを見ると、なぜか故郷を想う。今年の夏は自粛などやめて帰省しよう。夕焼けを見ていたらそう思った。

第三者委員会の大仕事

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東芝株主総会不正運営に経産省が関与していたことが第三者委員会の調査報告書で明らかにされた。問題の株主総会が開かれた当時の経産大臣は菅原一秀だ。報告書では、東芝社長から菅義偉に報告を行っていたことが明らかにされており、官房長官時代に菅が経産省を牛耳っていたことがわかる。
日産のカルロス・ゴーン追放事件は、当初から菅義偉経産省の介入が囁かれていたが、東芝の顛末を見るにつけ、同様に介入していたのはほぼ間違いないと思われる。

日本を代表する企業が政府と結託して株主に圧力をかけていたというのだから、これは歴史的事件だ。これでさらにゴーン事件の裏が暴かれたなら、日本は国際社会の信用を失い、外国資本はカントリーリスクが高いと判断して逃げ出すのではないか。

新型コロナ対策や五輪騒動を見るまでもなく、政財界の癒着、賃金水準の低下、モラル崩壊は後進国の証。日本の没落に「貧すれば鈍す」という言葉が浮かんだ。
それにしても、数十万のメールを解読し、スキャンダラスな事実を脚注というかたちで暴露した第三者報告書は凄い仕事をしたと思う。拍手を送りたい。